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SIGMAレンズ 体験イベントレポート

SIGMA(シグマ) 一眼レフ用交換レンズ 体験イベント その1(世界最高の光学メーカーを目指したモノ作り)

SIGMA(シグマ)さんの一眼レフ用交換レンズ 体験イベントに参加してきました。 イベントはシグマさんの歴史やモノ作りのお話しと、レンズをお借りしてモデル撮影会でした。
このレビューはWillVii株式会社が運営する国内最大級家電・ゲームレビューサイト「 みんぽす」のモノフェローズイベントに参加して書かれています。本レビュー掲載によるブロガーへの報酬の支払いは一切ありません。レビューの内容につきましてはみんぽすやメーカーからの関与なく完全に中立な立場で書いています。(唯一事実誤認があった場合のみ修正を行います)「モノフェローズ」に関する詳細はこちら。(WillViii株式会社みんぽす運営事務局) みんぽす
実は、僕が初めて触った一眼レフのレンズはシグマさんのレンズなんですよね。 勤務先にあるカメラがα100で「17-70mm F2.8-4.5 MACRO」と「SIGMA 30mm F1.4 EX DC」があったんです。最近では会社から借りて「SIGMA 30mm F1.4 EX DC」をNEX-5に使用しております。ですんで、勝手に身近に感じていたりします^^

そんなこんなで、レポート開始です。
イベント会場はハドソンスタジオという場所でした。世田谷の住宅街の中にあり、一見スタジオには見えない感じの場所でした。そしてお話してくださった方はなんとシグマ山木和人社長でした!
シグマ山木和人社長

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う~ん、先日参加したTwonkyイベントでも社長自らお話いただきましたが、今回も社長さんが登場ですか…これは貴重です。山木社長はとても爽やかな感じの方で、Monclerが良く似合っておりました^^

そんな山木社長に、まずはシグマさんの歴史からお話いただきましたよ。

1961年 レンズメーカーの最後発グループとしてSIGMA創業

1961年 レンズメーカーの最後発グループとしてSIGMA創業

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シグマさんの創業は1961年。
現在の代表取締役会長 山木道広さんが27歳の時に作った会社です。 ちなみに山木道広さんはもともと8mm用のレンズを作るメーカーに勤めていたそうですよ。

当時のレンズビジネスは現在のIT産業のようには大きなビジネスでした。 レンズメーカーは日本に50社以上あったと言われているそうで、その中でシグマさんは最後発の会社だったそうです。
レンズビジネスはブームだったんですが、競争が厳しく、現在、独立したレンズメーカーとして残っているのはタムロンさんと、コシナさん、そしてシグマさんだけとの事。

ちなみに、タムロンさんが今年60周年でシグマさんは来年で50周年で、シグマさんは、どちらかというと新参者だそうです。う~ん…僕には60周年も50周年も同じ感覚だったんですが、よくよく考えると10年の差って大きいですよね~。

SIGMAの事業戦略

SIGMAの事業戦略

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なぜシグマさんが競争に勝ち残ることができたのか?
それには3つの戦略があったからだそうです。
  • 自社ブランドを中心に事業を展開してきた
  • いかに他社と差別化をするかを考え、他の会社でやっていない事をやっていった
  • コスト下げる事や開発の自由度を得るために。自社生産…徹底した内製化をした
との事です。

ここで他社と差別化を考えた、当時のユニークなレンズを紹介していただきました。

SIGMA Telemac 2x

SIGMA
シグマさん創業時のヒット商品で2倍のテレコンバータです。
当時はテレコンバータそのものが少なく、ほとんどレンズ先端側に取り付けるフロントコンバーターでした。フロントコンバーターですとレンズの径に合わせて作られるので、各レンズ専用となってしまい汎用性がありませんでした。
創業者の山木道広さんがレンズとボディの間に中間レンズを入れれば汎用性が出せると考え、リアコンバーター式のテレコンバーターを開発したそうです。
リアコンバーター式はシグマさんが初めてで、苦しかった創業時のヒット商品になったそうです。ちなみに噂によると特許取るのを忘れてたらしいですよ(笑)

SIGMA Filtermatic Series(1970's)

SIGMA
これは70年代に発売したフィルターマチックシリーズです。
シリーズとして何本か出ているそうなんですが、レンズの中にフィルターが3枚内蔵されていて、上にあるレンズを回すとフィルターが切り替わるそうです!このギミック凄くないですか?ちょっとビックリ。

SIGMA Pantel Series(1970's)

SIGMA
パンテルシリーズ。パンは「パンフォーカス」、テルは「テレ(望遠)」を意味しているそうです。望遠は被写界深度が浅くなってしまいます。もちろんそれを楽しむこともできますが、深度は深くすることができません。そこで、望遠だが深度を深く撮りたいという要望に答える為に、このパンテルシリーズを開発したそうです。絞りがf64まで絞れて、非常に深い絞りにできるそうです。
ただし、レンズは絞りすぎると回折現象が起きピントが甘くなります。 (ちなみにレンズが性能を一番発揮するところは解放から2~3段絞った所) ですので、実際にf64はボケボケだったらしいのですが、f64まで絞れるという企画先行で作ったらしいです(笑)f64なんて初めて聞きました。一度作例を見てみたいですね。

SIGMA Mini Zoom 39-80mm F3.5(1975)

SIGMA
ミニズームは非常にコンパクトなズームレンズです。
当時のフィルム一眼の標準レンズというのは50mmのF1.8、F2が標準で、ズームはオマケ扱いで、ちょっとキワモノ的な存在だったそうです。 ですが、シグマさんはズームにはズームの利便性があると考え、コンパクトで常用できるズームレンズとしてミニズームを開発したそうです。
このレンズは非常にヒットしたそうなんですが、作るのが大変難しかったそうで、売れるのに商品を用意できなかったそうですよ(汗)
山木社長が子供の頃、当時の社員の方から「これ良いレンズなんだけど、作れないんだよね~」という話を聞いていたそうですよ(笑)

SIGMA Zoom Gamma 21-35mm F3.5-4 MF(1979)

SIGMA
あまり知られていない事なのですが、シグマさんは広角ズームレンズのパイオニアだそうです。
創業メンバーに父親が有名な山岳写真家だった方がおり、その方は、山岳写真が大好きで、広角レンズも好きだったそうです。この方が山岳写真家の事を考えて開発したレンズがこのZoom Gammaです。
1970代当時、広角レンズは単焦点しかなく、写真撮影の為にレンズを2本3本と持って行かなければならかったそうですが、広角ズームレンズであれば、一本ですみます。
本格的な登山は、いかに荷物を少なく、小さく、軽くするかを考え、グラム単位で管理する程、荷物にはシビアですので、持って行くレンズが一本で済むのは大きいです。
その後、その方は引退したそうなんですが、会社にはDNAが受け継がれており、
広角レンズに対してかなりこだわって作っているそうです。


他社とは差別化したユニークなレンズを作ってきたシグマさんですが、最近のレンズラインナップではオーソドックスなレンズが増えています。以下は現行のシグマレンズのマトリクスです。
SIGMAレンズマトリクス

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一部ではエビフライと呼ばれている200-500mm F2.8や、標準から望遠までサッカーや運動会などフィールド撮影では無敵の50-500mm。 そして128-300mmF2.8は非常に優秀なズームレンズ。
マクロは70mm 150mmと他には無い焦点距離を開発しています。70mmマクロはカミソリマクロと呼ばれていてシグマさんの中でももっとも性能が高いレンズの一つです。もともとの企画の時は2倍までいく設計だったのですが、結局最後はあきらめたそうです。ですが、あまりに等倍の性能が良すぎたので、これは等倍で出そうということで発売したそうですよ。
このように、オーソドックスなレンズがふえてはいますが、それでも他社とは違うモノを作ることを考えてレンズ開発を行っているそうです。

ちなみにこの図はみんぽすさんが提案したそうですよ。
以下のページではシーン別のおすすすめレンズガイドが見れます。
→シグマシーン別おすすめレンズガイド:みんぽす

SIGMAは全て国内生産。製造拠点は会津工場

SIGMAは全て国内生産。製造拠点は会津工場

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シグマさんの国内製造拠点は会津工場です。海外に工場を持っておらず、全て国内生産だそうです。10年前は交換レンズは海外では作れいないと言われていましたが、現在では各メーカーさんは海外で作っており、現在ではシグマさんとコシナさんのみが国内生産ということです。

SIGMA会津工場は垂直統合型の工場

SIGMA会津工場は垂直統合型の工場

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会津工場をシグマさんでは垂直統合型の工場と呼んでいます。
レンズの材料やEP(エンジニアリングプラスチック)、金属パーツ、半導体などは外部から買いますが、それ以外は全て自社内一カ所で生産を行っており、非常にフレキシビリティが高く、製品の企画や設計の自由度が高いそうです。

設計の自由度が高い

メーカーによっては自社でレンズを磨けず他社に頼まなければならない場合があり、この場合は研磨工場の能力に依存してしまうそうです。
あるOEM先の光学技術者が「このレンズにこういうの使いたいんだけど製造からダメって言われるんですよね…」と話していたそうです。このように企画設計ではOKだが、工場の技術力が無く生産設計ではNGになる事があるそうです。
シグマさんでは、製造拠点の技術力が高く、難しい加工にも挑戦するので、こういったことは起きず、設計の自由度が高いそうです。

※ちなみにシグマさんは、どうしてもと言う場合はOEMを受けているそうですが、基本的には増やすつもりは無いとのこと。


実は世界でもトップレベルの試作加工部門

さらに、金型工場と試作加工部門が工場に中にあるそうです。
金型を自社開発する事で精度を高め、開発期間も短縮でき、コストも抑える事ができるそうです。
試作加工部門は定年や嘱託で働いているようなベテランの人たちが集まっているのですが、この方々の技術力がスゴイらしいです。
OEMの相手先に削りだしの部品で作ったプロトタイプを納めたところ、向こうの担当者が「これ金型品ですよね?」、「こんな精度が高くでスムーズに動く削り品で無いでしょ!?」と驚いていたそうです。シグマさんとしては普通に作って納めたつもりが、相手の方がかなり驚いていたそうですよ。
そして次のメーカにも同じ事を言われて、山木社長は「実は世界でもトップレベルの試作加工部門だったんだ!」と気付いたらしいです(笑)
山木社長は試作加工部門がシグマさんの競争力や開発のキーになっていると感じており、会社を知れば知るほど非常に重要な資産だと感じているそうです。

国内工場は最近の円高で非常に苦しいですが、その資産を生かした形でのビジネスの仕方を最近は意識しているとの事ですよ。

SIGMAの転機その1:1995年 歴史的な超円高

SIGMAの転機その1:1995年 歴史的な超円高

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シグマさんにとって転機が2回あったそうです。
まず最初の転機は1995年の超円高(1ドル79円)。シグマさんは売り上げの8割が輸出を占めるので収入はドル・ポンド・ユーロが8割以上とのことで、円高になると円換算が下がって利益率がぐっと下がり非常に苦しかったそうです。

95年当時、交換レンズ業界はまだ海外展開はしていなかったのですが、この時期に一気に加速したそうです。 シグマさんでも、どうすべきか考えたのですが「国内で良いモノを作る」と考え、製品の高付加価値化へシフトし、業界で一番安いモノではなくて価値あるモノを作ってお客さんへ届けようと決めたそうです。

ちなみにシグマさんの高級ラインDXシリーズは、この円高の際に開発されたシリーズです。

SIGMAの転機その2:2008年 世界同時不況

SIGMAの転機その2:2008年 世界同時不況

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次の転機は2008年の世界同時不況。他社さんはリストラや海外展開を加速していきましたが、シグマさんはここでもう一回悩んだそうです。山木社長も会社はこのままつぶれてしまうんじゃないかと思ったそうですよ(汗)
SIGMAの転機その2:為替レートの推移

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2007年は一ドル115円や117円で、シグマさんによっては天国だったらしいです(笑)
2008年は10~11月のリーマンショックで20%下がりました。
シグマさんの売り上げは外貨がメインですので、突如全ての製品を20%値下げしてしまった状態になったそうです(笑)さらに大変だったのはユーロが25%下がった時だそうです。いまはもっと下がってもっと大変とのこと…って、大丈夫ですか?心配になっちゃいます(笑)
SIGMAの転機その2:原点回帰

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世界同時不況の中、他社はリストラを行い、海外展開の加速化をしていきます。
このときも、非常に悩んだそうですが、やはり海外に出ず、リストラも行わず「もう一回自分たちにできることをしよう!」と考えたそうです。 生き残るために何をすべきか?を社員と話し、出た結論は原点に戻る事「良いモノを作ろう」という事でした。
90年代後半から高付加価値化を進めてきましたが、2008年の時には本当に腹をくくって会社全体で「良いモノ作りを絶対にしよう!」と考えたそうです。
目標は「The finest optics company」世界最高の光学メーカーになろうと言うことを会社全体で意思統一し、なんとかリストラも行わず乗り切ったそうです。

世界最高の光学メーカーを目指したSIGMAの社内プロジェクト

世界最高の光学メーカーを目指したSIGMAの社内プロジェクト

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そしてシグマさんでは世界最高の光学メーカーを目指し多数の社内プロジェクトを立ち上げました。

設計規格の見直し

設計企画を完全に見直したそうです。昔は、世界で1番小さくて軽いレンズを作るために、周辺光量の低下やMTFが少し低くても良いとか、「ユニークな製品なのだから少し性能が落ちても良い」と言い訳をしていた時期もあったそうです。
ですがこの考えを改め、現在では最低でもそのクラスでの最高レベル(できれば最高のモノ)でなければ、設計企画は通さないことを決め、もし他社と比べて劣っている場合は却下しているそうです。

ゴースト・フレア シュミレーションプログラムの自社開発

シグマレンズは逆光に弱いと言われて来ました。事実、昔はそうだったと山木社長も認めています。
そこで、ゴーストフレアを徹底的に無くす事を目指し、シュミレーションのプログラムを自社で開発、ゴーストフレアだけを見る技術者を専任で3人置いたそうです。
まず設計段階でシュミレーションを行い、レンズの一部分をコンマ5mmで調整するなどシュミレーション上での調整を行います。
その後で削り出しの試作品で実写のテストを行い、シュミレーションでは分からない部分を確認し、試作品でダメならもう一度設計をし直しているそうです。
そして金型で製品が出来たあとに、最後にもう一度ゴーストフレアのテストします。 削り出しで作った試作品と、金型で作った製品では同じ形状設計でもレンズを押さえるエッジ形状が異なってくる為です。 もし、ゴーストフレアのテストして、ダメだったら金型に修正をかける場合もあるそうです。
いや~徹底してますね!テスト結果を待ってる間、担当者はイヤな汗をかきそうですね(笑)
このように逆光に弱いというシグマの汚名を返上しようと、かなり徹底して改善しており、山木社長自身も最新のシグマレンズはゴーストや逆光への耐性は業界最高レベルになっていると自負しているそうです。

この他にも製造品質規格の見直しや、合焦性改善の取り組み、品質改善を主たる目的とした設備投資計画など、様々な事に取り組んでいるそうですよ。
以上、SIGMA(シグマ)さんの歴史や世界最高の光学メーカーを目指したモノ作りのお話しでした。

シグマさんのレンズは完全なるメイドインジャパンだったんですね~。
試作加工部門のベテラン職人達や、品質を徹底的に追求する姿勢は、日本の「ものづくり」精神を受け継いでる感じがしますね。
海外生産を行わないのは経営的には大変なのかもしれませんが、是非とも今後もメイドインジャパンの高品質、高付加価値を貫いて欲しいです。

勤務先の一眼レンズがたまたまシグマレンズだった為、なんとなく身近に感じたり、「レンズだったらシグマが良いんでしょ?」とか漠然と思っていたんですが、今回のイベントに参加する事で、シグマさんを深く知ることができ、改めて好きになりました(笑)

この後、シグマさんのレンズラインナップから人気の高いレンズをピックアップしてご説明いただきました。
それでは、体験イベント その2(こだわりの広角ズームレンズ、人気レンズの紹介)に続きます。

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